企業で働く犬がいる。社員を癒やす社員犬や、身体障害者の生活をサポートする補助犬だ。こうした「ビジネスワン(犬)」の中でも、視覚障害者の雇用創出に欠かせないのが盲導犬だ。企業が盲導犬の受け入れに必要な設備や運用コストは多くの人が想像するほど掛からないが、現状は導入があまり進んでいないといえる。
盲導犬の受け入れは障害者雇用を創出するという点で、企業の社会的責任(CSR)への取り組みとも言い換えられる。盲導犬育成を支援する募金箱の設置や社内勉強会の開催など、社員一人一人ができる取り組みも、CSR活動を支えていく。企業のCSRの今を、日立情報システムズが取り組んだ盲導犬の受け入れやNECの社外活動から探っていく。
●盲導犬を受け入れるということ
「企業側のサポートは不可欠だ」
こう話すのは日立情報システムズで盲導犬「イッシュ」とともに二人三脚で働く穂刈顕一さんだ。白内障で視力が低かった穂刈さんが同社に入社したのは2005年。現在、業務サポート本部 人財戦略部 人事課に所属している。白杖(はくじょう)と呼ぶつえを使い、自宅の千葉市から都内の職場まで電車で通勤していた。ある日駅のホームからの転落事故を経験し、働くには盲導犬が必要だと感じた。2007年、日本盲導犬協会からやってきたのが、イッシュだった。
多くの国内企業にとって盲導犬の導入は未知の領域であり、日立グループでも前例はなかった。穂刈さんから相談を受けた日立情報システムズは、盲導犬を受け入れるためのアイデアを一緒に出し合った。「分からないことは受け入れてから考えよう」という姿勢で、イッシュと働くことを決めた。
実際に受け入れると、幾つかの問題が生じた。その1つがにおいである。イッシュは多目的トイレで食事をする予定だったが、社内に食事のにおいが充満してしまう。穂刈さんは上司と相談し、食事場所を駐車場に移すことにした。盲導犬の受け入れ後までを支援する会社側の努力により、問題を1つずつ解決していった。
●そっと見守るようになった
盲導犬の受け入れは、関係者だけの問題ではない。共に働く同僚にも理解と協力が求められる。例えば、ハーネスと呼ぶ胴輪を付けた盲導犬は仕事中であり、ほかの人が触ったり声を掛けたりしてはいけない。
こうした決まりを職場に周知するために、日立情報システムズは社内報を使い、盲導犬と働くための心構えを従業員に伝えた。盲導犬と歩行体験ができるイベントも企画している。「盲導犬を街で見かけても、触ったりせずに、そっと見守るようになった」と話す穂刈さんの同僚の声からは、受け入れ体制の整備が進んでいることが見て取れる。
実は、企業が盲導犬を受け入れるための費用はゼロに近い。貸与された盲導犬の餌や健康管理に掛かるコストは、利用者が責任を持って負担しないといけないからだ。企業の盲導犬受け入れについて穂刈さんは、「施設の改修といったハード面より、どうすればスムーズに導入できるかを考え、支援するというソフト面での理解が重要だ」と力を込める。
●進まない障害者雇用
日立情報システムズでは、CSR活動の一環として障害者雇用に力を入れている。実際、2007年は96人(法定雇用数92人)、2008年は99人(同97人)を雇用した。
一方、厚生労働省が2009年11月に発表した障害者の雇用状況を見ると、法定雇用率を達成している民間企業(56人以上規模)は45.5%にとどまっている。また「身体障害児・者実態調査(2006年)」では、全国の視覚障害者数は約31万人と報告されている。盲導犬を必要とするのは「約7800人」(1998年 日本財団調べ)であるのに対し、日本で活動する盲導犬は現在「1045頭」(日本盲導犬協会)。企業のCSR活動とも関連のある障害者雇用には、盲導犬や補助犬の育成が急務となっている。
盲導犬の普及を支援する活動は、企業主体のものだけでない。普段は障害がある学生の就職活動の相談に力を入れている穂刈さんだが、週末は盲導犬の仕事を紹介する活動に取り込んでいる。「僕のライフワークですから」と笑う穂刈さん。こうした草の根の活動が、盲導犬育成に一役買っている。
個人でできる募金活動もその1つだ。代表例は、日本盲導犬協会が実施している「ラブラドール募金箱」である。不特定多数の人が出入りする場所に置いて募金を募るもので、企業が受付などに設置できる。ラブラドール募金箱の設置数は全国で1万8403個(2009年3月31日現在)あり、2008年度は1億6323万3984円の募金が集まった。1頭につき約300万円掛かる盲導犬育成の資金源は、企業の枠を超えた一人一人の募金活動によるものだ。
●企業が取り組む盲導犬の啓発活動
企業が外部に向けて盲導犬の啓発活動に力を入れるケースもある。「盲導犬キャラバン」を手掛けるNECだ。日本盲導犬協会のパートナー企業として、1997年から盲導犬の育成や募金活動を支援している。将来盲導犬になる子犬を家庭で約1年間育てる「パピーウォーカー」と呼ぶボランティア活動も実施、これまで3人の従業員が家族とともに育成に携わってきた。
2008年度からは、小中学校で盲導犬の普及を促す「NEC 盲導犬キャラバン」も支援している。日本盲導犬協会のスタッフ、ボランティア、盲導犬ユーザーを含むキャラバン隊が、盲導犬の講義や歩行体験のデモンストレーションを行う活動だ。2009年度は34校で実施する予定としている。
●企業、人と盲導犬
2002年に施行された身体障害者補助犬法が定義した補助犬は、盲導犬、介助犬、聴導犬の3種である。障害者雇用の創出には、今回取材した盲導犬に加え、介助犬や聴導犬の育成も欠かせない。しかし、これらは盲導犬以上に認知度が低く、実働数も少ない。
補助犬の育成は簡単なことではない。補助犬として働いているのは、訓練を受けた犬である。そして彼らは、本来なら人と人の助け合いで解決すべき問題をサポートしてくれている。
日立情報システムズの盲導犬受け入れ、日本盲導犬協会の募金活動、NECのキャラバンからは、企業や社員一人一人ができるCSR活動の一端が見えてくる。盲導犬の普及や育成に取り組むことは、誰もが平等に働ける社会基盤作りにもつながっていくだろう。1月16日10時5分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100116-00000006-zdn_ep-sci障害者雇用について、記事になることはあまりありませんでした。記事にしても売れないからです。(マスコミは常に話題になりそうな記事を好みます。)
今回記事になった訳は、障害者を積極的に受け入れようという企業がほとんどなかった、だから話題になりそう、そう判断したからではないでしょうか?(別に、マスコミのそうした姿勢を批判するつもりはありません。マスコミというものはそういうもの、と理解しています。)
本題に戻りますが、企業側にも理由(言い訳)があります。株主や金融機関から「なぜ障害者を雇用するのか?」という声があがるからです。この不況下、障害者を抱えるほど企業に体力が残っていない上、(企業にとって大切な)株主様、金融機関様からご批判を頂戴してはますます大変になってしまう、そんなところでしょうか。
障害者雇用については、法律である一定以上の雇用が規定されていたはずです。
そのような状況下で、日立情報システムズやNECは、CSRとしての新たな局面を見出したのではないでしょうか。
ところで、10/26の所信表明演説で鳩山首相は、障害者が社員の70%以上を占める、とある会社を例に「友愛」社会の実現を訴えていました。両社がこれに呼応したわけではないでしょうが今後も更なる展開が期待されるCSR活動でしょう。